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「他人の点数は気になるのに、指摘されると反発する」
思春期の社会的比較と評価不安
テストが返却されると、隣の生徒の点数を気にする。
模試の判定を友達と見せ合う。
「何点だった?」
「平均点はいくつ?」
「クラスで一番高かったのは誰?」
と聞く。
自分より点数が低い生徒を見つけると、少し安心する。
一方、自分より高い点数を取った友達を見ると、急に不機嫌になる。
ところが、先生や保護者から、
「今回は勉強量が不足していたね」
「このままでは志望校に届かないよ」
「もう少し早く始めた方がよかったね」
と指摘されると、
「分かってる」
「今からやろうと思っていた」
「人と比べないで」
「自分なりに頑張っている」
「そんな言い方をされたら、やる気がなくなる」
と反発する。
他人の点数を気にしているのは本人です。
それなのに、大人から評価されると、比較そのものを拒否する。
一見すると、矛盾した行動に見えます。
しかし、これは単なるわがままではありません。
思春期には、自分が周囲からどのように見られているかへの意識が強まり、仲間との比較を通して自分の位置を確認する一方で、外部から一方的に評価されたり、行動の自由を奪われたりすることには強く反応する場合があります。
この現象を理解する上で重要になるのが、
社会的比較。
評価懸念。
自己呈示。
心理的リアクタンス。
思春期の自己意識。
という心理学的な概念です。
他人の点数が気になるのは、性格が悪いからではない
社会的比較理論を提唱したのは、社会心理学者Leon Festingerです。
Festingerは1954年、人には自分の意見や能力を評価しようとする傾向があり、客観的な基準が十分に存在しない時には、他者との比較によって自分の位置を確かめると論じました。
例えば、テストで70点を取ったとします。
70点という数字だけでは、その結果がよいのか悪いのかを判断しにくいことがあります。
平均点が40点なら、かなり高い得点です。
平均点が85点なら、十分とは言えません。
同じ70点でも、周囲との関係によって意味が変わります。
そのため生徒は、
平均点。
順位。
友達の点数。
前回の成績。
志望校を目指す生徒の得点。
と比較し、自分の現在地を確かめようとします。
Festingerの原著は、今日の意味で一つの実験結果だけを報告したものではなく、当時の集団研究や意思決定研究をもとに社会的比較の仮説を体系化した理論論文です。
したがって、
「人は必ず自分と似た相手と比較する」
「比較すれば正確に自己評価できる」
と固定的な法則として扱うべきではありません。
その後の研究では、比較する相手、本人の目的、感情、集団との一体感などによって、比較の影響が変わることが示されています。
それでも、
自分の能力を知るために、周囲を基準として使う
という考え方は、テスト後の生徒の行動を理解する上で重要です。
上を見る比較と、下を見る比較
社会的比較には、自分より優れている相手を見る比較と、自分より劣っている相手を見る比較があります。
自分より高い成績の生徒と比較することは、一般に上方比較と呼ばれます。
上方比較は、
「あの人の勉強方法を取り入れよう」
「自分もそこまで伸びたい」
という意欲につながることがあります。
一方で、
「自分には無理だ」
「どうせ追いつけない」
「自分だけできていない」
という劣等感につながることもあります。
自分より低い成績の相手と比べる下方比較は、
「自分はまだ大丈夫だ」
という安心や自尊心の回復に役立つことがあります。
しかし、
「自分より低い人がいるから、今のままでよい」
という現状維持の理由にもなります。
つまり、比較そのものが悪いわけではありません。
問題は、
何のために比較するのか
です。
自分の感情を落ち着かせるためだけに比較するのか。
自分の行動を改善する情報として比較するのか。
ここで結果が変わります。
生徒が知りたいのは、点数だけではない
生徒が友達の点数を知りたがる時、単に数字へ興味を持っているとは限りません。
その背後には、
自分はクラスの中でどの位置にいるのか。
友達から頭が悪いと思われていないか。
先生から期待されているか。
保護者を失望させないか。
志望校を口にしても笑われないか。
といった不安が隠れていることがあります。
テストの点数は、学習成果を示す一つの指標です。
しかし思春期の生徒にとっては、
自分が周囲からどう見られるかを左右する社会的な情報
にもなります。
そのため、点数を指摘された時に、生徒は、
学習方法についての助言
としてではなく、
自分の能力や価値を人前で評価された
と感じることがあります。
評価懸念とは何か
評価懸念とは、他者から否定的に評価されることへの心配や不安を指します。
この研究領域で広く知られているのが、David WatsonとRonald Friendによる1969年の研究です。
彼らは、他者から否定的に評価されることへの恐れを測定するFear of Negative Evaluation Scaleと、対人場面での回避や苦痛を測るSocial Avoidance and Distress Scaleを開発しました。
研究では358人の大学生へ尺度を実施し、複数の実験と相関分析によって妥当性を検討しました。
社会的な不安が高い人は、対人関係への心配が強く、交流を避け、一人で行う活動を好み、自信の低さを示す傾向が報告されました。
ただし、この研究の対象は大学生であり、中学生や高校生を直接調べたものではありません。
また、質問紙への回答は本人の自己報告であり、実際の行動を完全に表しているとは限りません。
それでも、
他者から悪く思われることへの不安を、単なる恥ずかしがりではなく測定可能な心理的傾向として扱った
という点で重要な研究です。
指摘の内容より、「どう見られたか」が気になる
例えば、先生が生徒へ、
「今回の英語は、単語の定着が不足していたね」
と伝えたとします。
先生は、失点原因を説明したつもりです。
しかし生徒は、
「頭が悪いと思われた」
「努力していないと思われた」
「みんなの前で恥をかかされた」
と受け取るかもしれません。
この時、生徒は英単語の定着不足について考える前に、自分の社会的な立場を守ろうとします。
「今回は時間がなかっただけ」
「単語は分かっていた」
「問題が難しかった」
「ケアレスミスだから」
と反論する。
この反論は、学習上の事実を冷静に検討した結果とは限りません。
他者から低く評価されたと感じた時に、自分の印象や自尊心を守ろうとする反応である可能性があります。
自己呈示とは「他人からどう見えるか」を調整すること
Mark LearyとRobin Kowalskiは1990年、自己呈示や印象管理に関する研究を整理し、二つの過程からなるモデルを提案しました。
一つ目は、印象動機です。
これは、
他者からどのように見られるかを調整したい
という動機です。
二つ目は、印象構成です。
これは、
実際にどのような自分を見せるか
を組み立てる過程です。
彼らのレビューでは、自己呈示の強さは、
相手からの評価が自分の目標にどれほど関係するか。
望ましい結果にどれほど価値があるか。
現在の自分の印象と、見せたい印象にどれほど差があるか。
といった要因に左右されると整理されました。
受験生に置き換えると分かりやすくなります。
志望校に合格したい。
先生から「伸びている」と思われたい。
保護者から「努力している」と認められたい。
友達から「頭がよい」と見られたい。
このような場面では、他者からの評価が重要になります。
その時に悪い点数を取ると、
見せたい自分と、結果として表れた自分との間に差
が生まれます。
すると生徒は、その差を小さくする説明を行うことがあります。
「本気でやっていなかった」
「今回は体調が悪かった」
「このテストは実力を正しく測っていない」
「本当はできるけれど、ミスをしただけ」
これは、すべてが嘘だという意味ではありません。
実際に体調が悪かったことも、問題に偏りがあったこともあるでしょう。
しかし、その説明が自分の学習状態を分析するためではなく、
能力が低いと思われないようにするため
に使われる場合、学習改善へつながりません。
「できなかった」と認めることには社会的な危険がある
大人は生徒に対して、
「できなかったなら、素直に認めればよい」
と思うかもしれません。
しかし、生徒にとっては、
「できなかった」
と認めることが、単なる事実の確認ではない場合があります。
友達より能力が低いと認めること。
先生の期待に応えられなかったと認めること。
親を失望させたと認めること。
自分が努力していなかったと認めること。
これらは、自分の社会的な評価や自己像を脅かします。
そのため、指摘の内容が正しくても、すぐには受け入れられないことがあります。
ここで大人が、
「言い訳するな」
「事実を認めなさい」
と強く迫ると、生徒はさらに防衛的になる可能性があります。
なぜ、正しい指摘ほど反発されることがあるのか
心理的リアクタンスという概念を提唱したのは、Jack Brehmです。
心理的リアクタンスとは、自分の行動や選択の自由が脅かされたと感じた時に、その自由を回復しようとする動機づけです。
例えば、
「今日から必ず3時間勉強しなさい」
「スマートフォンは禁止です」
「あなたはこの教材をやるしかありません」
「先生の言うとおりにしなさい」
と一方的に決められると、
内容が合理的であっても、
自分で決める自由を奪われた
と感じることがあります。
すると、
わざと勉強しない。
指示と反対のことをする。
欠点を探して反論する。
「やろうと思っていたけれど、言われたからやりたくなくなった」と感じる。
このような反応が起こる場合があります。
思春期の反発を調べたVan Petegemらの研究
Sofie Van Petegem、Bart Soenens、Maarten Vansteenkiste、Wim Beyersは2015年、思春期の反抗を、心理的リアクタンス理論と自己決定理論の両方から検討しました。
研究は四つの調査から構成され、12歳から21歳まで、合計1,472人が参加しました。
一般の青年だけでなく、臨床的な支援を受けている青年も含まれ、本人以外の情報提供者を用いた研究や、仮想場面を提示する研究も行われました。
結果として、親の関わりが統制的であると感じられることは、自律性が妨げられたという感覚や心理的リアクタンスと関連し、それらが反抗的な行動や心理的不適応と関連していました。
この関連は、親の温かさやルール設定の影響を統計的に考慮した後にも確認されました。
ただし、この研究から、
親が指摘したから子どもが必ず反抗した
とすべての場面で断定することはできません。
複数の研究を組み合わせていますが、質問紙を用いた相関的な分析も含まれます。
反抗傾向の強い青年が、親の関わりをより統制的に感じるという逆方向の影響も考えられます。
また、必要なルールや限界設定まで避けるべきだという研究ではありません。
問題になるのは、ルールの存在そのものより、
本人の視点を聞かず、理由を説明せず、罪悪感や恥を使って一方的に従わせる関わり
です。
「人と比べるな」と言われると反発する理由
興味深いことに、生徒自身は他人の点数を見ています。
しかし先生や保護者が、
「〇〇さんはもっと勉強している」
「同じクラスの子はもう過去問を始めている」
「お兄ちゃんはこの時期にはもっとできていた」
と言うと、強く反発します。
これは、比較の主体が違うからです。
自分で他人の点数を見る場合は、自分が比較相手やタイミングを選んでいます。
見たくなければ見ないこともできます。
一方、大人から比較される場合には、
自分の意思と関係なく評価基準を押しつけられた
と感じやすくなります。
また、
他人より劣っている。
期待に応えていない。
このままでは価値がない。
という人格評価まで含まれているように受け取ることがあります。
そのため、比較情報そのものではなく、
比較される立場に置かれたこと
へ反発している可能性があります。
思春期には「見られている自分」への意識が強くなる
思春期の自己意識を説明する概念として、「想像上の観衆」が知られています。
これは、自分の外見や行動が、実際以上に周囲から注目され、評価されているように感じる傾向を説明するものです。
David Elkindは、思春期の認知発達と自己中心性を結びつけ、この概念を提案しました。
その後、Richard RyanとRebecca Kuczkowskiは1994年、7年生、8年生、9年生、12年生に相当する850人の青年を対象に、想像上の観衆、公的自己意識、個性の表現、親子関係などを質問紙で調べました。
研究では、想像上の観衆に関する傾向と公的自己意識との関連が確認され、親との安定した関係が、年齢の上昇に伴う自己意識の変化に関係する可能性も示されました。
ただし、想像上の観衆については、研究結果が一貫しているわけではありません。
年齢差や性差が明確に再現されない研究もあり、尺度が回答者へ特定の答え方を促す可能性も指摘されています。
Luc Goossensによる研究では、学年による結果が複雑で、想像上の観衆と形式的操作思考との関連も確認されませんでした。
そのため、
思春期の子どもは全員、自分が注目されていると思い込む
と単純化してはいけません。
それでも、思春期に周囲の視線、仲間からの評価、恥ずかしさ、外見、失敗の公開性が重要になりやすいことは、多くの生徒の行動を理解する上で参考になります。
「みんなの前で言わないで」が示していること
先生が正しい内容を指摘しても、どこで、どのように伝えるかによって受け止め方は変わります。
同じ、
「今回、英単語の練習が不足していた」
という指摘でも、
面談室で一対一で伝える場合と、
友達がいる前で伝える場合では、意味が違います。
人前では、
学習改善の情報
よりも、
自分の能力が低いと周囲へ知られた
という意味が強くなることがあります。
すると、生徒は内容を検討する前に、
「そんなことはない」
「別に困っていない」
「このテストはどうでもいい」
と自分を守ろうとします。
この反発を見て、
「反省していない」
と判断するのは早すぎます。
反省できないのではなく、
人前で自分を守ることが優先されている
可能性があります。
大人の指摘が「情報」ではなく「判決」になっていないか
生徒が反発する時、指導する側は、
「正しいことを言ったのに、なぜ受け入れないのか」
と考えます。
しかし、伝え方を確認する必要があります。
「今回の数学は30点だったね」
これは事実です。
「だから、あなたは努力していない」
これは解釈です。
「いつも口だけだ」
これは人格を含む評価です。
「このままでは、どこにも合格できない」
これは将来についての断定です。
「みんなはもうやっている」
これは比較です。
「先生の言うとおりにしなさい」
これは統制です。
これらが一度に伝えられると、生徒には学習上の改善情報として届きません。
自分の能力、人格、将来、自由をまとめて否定されたように感じます。
その結果、
「もういい」
「自分でやる」
「どうせ何を言っても無駄」
と対話そのものを終了させることがあります。
他人の点数を聞くことを禁止しても、比較はなくならない
保護者や先生が、
「人と比べても意味がない」
「自分の点数だけ見なさい」
と伝えることがあります。
確かに、他人の点数だけを見て一喜一憂する学習は望ましくありません。
しかし、社会的比較そのものを完全になくすことは難しいでしょう。
学校には順位があります。
模試には偏差値や判定があります。
入試は一定の選抜を伴います。
さらに、思春期には仲間との関係が重要になります。
したがって必要なのは、
比較するな
ではありません。
比較から何を読み取るかを教えることです。
比較を感情から情報へ変える
友達が数学で90点を取った。
自分は60点だった。
ここで、
「あの人は頭がいい。自分は駄目だ」
と考えれば、比較は人格評価になります。
一方、
どの問題で30点の差がついたのか。
相手はいつから準備したのか。
何回問題集を反復したのか。
自分はどの単元を落としたのか。
その差のうち、次回までに何点を縮められるのか。
と考えれば、比較は行動情報になります。
比較する対象も重要です。
他人の最終得点だけを見るのではなく、
学習開始時期。
使用した教材。
反復回数。
確認テストの結果。
時間配分。
間違いの直し方。
を見る。
すると、
「あの人はすごい」
で終わらず、
「自分が取り入れられる行動は何か」
へ進めます。
STUDY HOUSEでは、他者比較を禁止しない
STUDY HOUSEでは、他人の成績を一切気にしないように指導するわけではありません。
受験には、合格最低点、平均点、偏差値、順位があります。
自分の位置を知るために、集団の情報は必要です。
しかし、他人の点数を自分の価値へ変換しないようにします。
見るべきなのは、
誰に勝ったか。
誰に負けたか。
だけではありません。
志望校の目標点まで、あと何点か。
前回から何点伸びたか。
どの単元が伸びたか。
どのMISTAKEが減ったか。
何を変えたことで点数が動いたか。
次のテストまでに何を修正するか。
です。
他者の成績は、自分を傷つけるための材料でも、自分を安心させるための材料でもありません。
自分の行動を改善するための参考情報です。
STUDY HOUSEでの実装① 最初に本人の自己評価を聞く
テストが返却された時、いきなり大人が評価を伝えると、生徒は受け身になります。
そこで、まず本人へ聞きます。
「今回の結果を、自分ではどう見ている?」
「予測していた点数と比べて、どうだった?」
「うまくいったところはどこ?」
「足りなかったところはどこ?」
「次回、何を変える必要があると思う?」
最初に本人の認識を確認します。
これは、生徒の意見をすべて採用するという意味ではありません。
指導者が先に判決を下すのではなく、生徒自身を分析の主体にするためです。
本人の認識と実際の結果にズレがあれば、その後でデータを示します。
STUDY HOUSEでの実装② 人前で人格を評価しない
学習上のフィードバックは、可能な限り具体的な行動へ向けます。
「あなたは怠けている」
ではなく、
「計画した7日間のうち、実行できたのは3日だった」
と伝える。
「いつも言い訳する」
ではなく、
「前回も今回も、再テストを行わないまま本番を迎えた」
と伝える。
「友達より努力していない」
ではなく、
「必要学習時間に対して、今週は5時間不足している」
と伝える。
人格ではなく、記録を見る。
印象ではなく、行動を見る。
これにより、本人の社会的な価値を攻撃せず、修正可能な情報として伝えやすくなります。
STUDY HOUSEでの実装③ 比較対象を本人にも選ばせる
他人との比較を扱う場合は、何を学びたいのかを明確にします。
「誰の勉強方法を参考にしたい?」
「その人の何が優れていると思う?」
「今の自分でも取り入れられることは何?」
「点数以外に、どの行動を比較したらよい?」
生徒自身に比較の目的を考えさせます。
これにより、
一方的に比較された
という感覚を減らし、比較を自分の学習へ使いやすくします。
STUDY HOUSEでの実装④ 選択肢を残した指導を行う
必要な学習量は変えられなくても、方法に選択肢を持たせられることがあります。
「英単語を毎日300語確認する必要がある。朝と夜のどちらでやる?」
「数学はこの2単元を今週中に復習する。どちらから始める?」
「今日は再テストが必要だ。授業前と授業後のどちらにする?」
このように、
何を達成する必要があるか
という基準は明確にしながら、
どう実行するか
に本人の選択を残します。
これは、生徒の好きなことだけをさせる放任ではありません。
必要な枠組みの中で、本人が行動の主体になれるようにする支援です。
STUDY HOUSEでの実装⑤ 反発が起きた時に、すぐ押し返さない
生徒が、
「分かってる」
「もういい」
「やる気がなくなった」
と反発した時、指導者も感情的になることがあります。
しかし、その場で正しさを競うと、問題は学習から主導権争いへ変わります。
そこで、
「今の言い方だと、責められたように感じた?」
「内容ではなく、伝え方が嫌だった?」
「人と比べられたことが嫌だった?」
と確認します。
感情を確認した後で、
「では、伝え方は改める。ただ、今回の未実施分は残っている。どう修正する?」
と事実へ戻ります。
感情を受け止めることと、必要な学習基準をなくすことは別です。
STUDY HOUSEでの実装⑥ 比較をGAP分析へ変える
STUDY HOUSEでは、比較を次の形へ変換します。
現在の得点。
目標得点。
得点差。
失点した単元。
失点原因。
残り日数。
確保できる学習時間。
必要な反復回数。
次の確認日。
例えば、
友達は80点、自分は60点だった
で終わらせません。
20点差の内訳を見る。
単語で8点。
文法で6点。
長文の時間不足で6点。
では、
単語は暗記ツールと再テスト。
文法は教科書作りと問題演習。
長文は時間を測ったREPLAY。
と行動へ変えます。
比較対象は友達ですが、最終的に管理するのは自分の行動です。
研究から言えること
ここまでの研究から、次のことが示唆されます。
人は、自分の能力や意見を評価する際に、他者との比較を利用します。
他者から否定的に評価されることへの不安は、対人行動や自己評価に影響します。
人は、他者からどのように見られるかを意識し、望ましい印象を作ろうとすることがあります。
自分の自由や選択が脅かされたと感じると、内容が合理的であっても反発が生じる場合があります。
思春期には、周囲の視線や公的な自己への意識が、学校生活や対人関係へ影響することがあります。
したがって、
他人の点数が気になるのに、指摘されると反発する
という行動は、必ずしも論理性がないわけではありません。
比較によって自分の位置を知りたい。
しかし、他人から低く評価されたくない。
自分の印象を守りたい。
自分で行動を選びたい。
これらの動機が同時に働いている可能性があります。
研究からは断定できないこと
一方、心理学の概念だけで、個々の生徒の反応を決めつけることはできません。
生徒が反発したからといって、必ず心理的リアクタンスが原因とは限りません。
指摘の内容が不正確だった可能性もあります。
人前で恥をかかせるような伝え方だったかもしれません。
過去に不公平な比較を繰り返されてきた可能性もあります。
強い評価不安の背景に、いじめ、発達特性、社交不安、家庭内の圧力などが関係している場合もあります。
また、紹介した研究には、成人や大学生を対象としたもの、質問紙に基づくもの、横断的な研究も含まれています。
これらを日本の中高生へそのまま当てはめることには限界があります。
研究概念は、生徒へレッテルを貼るためではありません。
なぜ指摘が届かなかったのか。
どのような伝え方なら、本人が情報として受け取れるのか。
を考えるために使うものです。
最後に
他人の点数を気にすることを、すぐに否定する必要はありません。
自分の位置を知りたい。
周囲から遅れていないか確かめたい。
友達からどう見られるか気になる。
これらは、思春期の生徒にとって自然な関心です。
しかし、比較が、
自分は駄目だ。
あの人には勝てない。
自分より低い人がいるから大丈夫。
という感情だけで終われば、成績は変わりません。
必要なのは、比較を行動改善の情報へ変えることです。
誰が何点だったか。
ではなく、
どこで差がついたのか。
どの行動が違ったのか。
自分が取り入れられることは何か。
次のテストで何を変えるのか。
ここまで考える。
また、大人は生徒の評価への敏感さを否定してはいけません。
「人の目を気にするな」
「事実を言われたくらいで反発するな」
と言っても、その敏感さは消えません。
まず、
指摘されて恥ずかしかった。
人前で能力を否定されたように感じた。
自分で決める自由を奪われたように感じた。
という感情を確認する。
その上で、
伝え方と、指摘された事実を分ける。
伝え方に問題があれば、大人が修正する。
事実として不足していた学習があれば、生徒が修正する。
比較そのものをなくすのではなく、比較の使い方を変える。
他者評価への敏感さを否定せず、比較を行動改善の情報へ変換する。
これが、思春期の生徒に必要な学習支援です。
主要参考文献
Festinger, L.(1954). A theory of social comparison processes. Human Relations, 7(2), 117–140.
Watson, D., & Friend, R.(1969). Measurement of social-evaluative anxiety. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 33(4), 448–457.
Leary, M. R., & Kowalski, R. M.(1990). Impression management: A literature review and two-component model. Psychological Bulletin, 107(1), 34–47.
Brehm, J. W.(1966). A Theory of Psychological Reactance. Academic Press.
Van Petegem, S., Soenens, B., Vansteenkiste, M., & Beyers, W.(2015). Rebels with a cause? Adolescent defiance from the perspective of reactance theory and self-determination theory. Child Development, 86(3), 903–918.
Elkind, D.(1967). Egocentrism in adolescence. Child Development, 38(4), 1025–1034.
Elkind, D., & Bowen, R.(1979). Imaginary audience behavior in children and adolescents. Developmental Psychology, 15(1), 38–44.
Ryan, R. M., & Kuczkowski, R.(1994). The imaginary audience, self-consciousness, and public individuation in adolescence. Journal of Personality, 62(2), 219–238.
Goossens, L.(1984). Imaginary audience behavior as a function of age, sex and formal operational thinking. International Journal of Behavioral Development, 7(1), 77–93.
STUDY HOUSEでは、比較を「自分を責める材料」ではなく「次の行動を決める情報」に変えます
STUDY HOUSEでは、生徒へ、
「人と比べてはいけない」
と一律に伝えることはしません。
受験では、自分の現在地を知るために、平均点、偏差値、順位、合格最低点などの情報が必要です。
しかし、比較の目的を、
誰に勝ったか。
誰に負けたか。
へ置くのではなく、
目標まで何点必要か。
どの単元を修正するか。
どの学習方法を取り入れるか。
いつ再テストするか。
へ変えていきます。
学習計画表。
教科書作り。
ブラックノート。
暗記ツール。
MISTAKE分析。
REPLAY。
確認テスト。
これらの仕組みを使い、感情的な比較を、具体的な改善行動へ変換します。
また、先生が一方的に判定を下すだけではなく、生徒本人の自己評価を先に聞きます。
「自分では、今回の結果をどう見ている?」
「何ができた?」
「何が足りなかった?」
「次に何を変える?」
この対話を通して、生徒が自分の学習を自分で分析できるようにします。
必要な基準は曖昧にしません。
しかし、生徒の人格を否定せず、行動と記録をもとに伝えます。
「他人の点数ばかり気にして落ち込んでしまう」
「指摘されると反発し、振り返りができない」
「友達と比較して安心し、勉強を先延ばししている」
「親が勉強の話をすると、すぐに言い合いになる」
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