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さて
なぜ人は「自分に同意する人」だけを探すのか
SNS、共感、エコーチェンバーの心理
学校や塾で先生から注意された生徒が、家へ帰って保護者へ不満を話す。
保護者から思ったような反応を得られないと、今度は友達へ相談する。
それでも納得できなければ、SNSへ投稿する。
「先生にこんなことを言われました。これってひどくないですか?」
すると、
「それは先生がおかしい」
「あなたは悪くない」
「そんな塾は辞めた方がいい」
「学校へ抗議するべき」
といった反応が集まることがあります。
自分に同意してくれる人が見つかると、安心します。
「自分の感じ方は間違っていなかった」
「やっぱり自分は悪くない」
「問題があるのは相手だ」
と確信できます。
一方で、
「注意された理由も確認した方がよい」
「あなたにも改善できる部分があるかもしれない」
という意見には、不快感を覚えることがあります。
「この人は分かってくれない」
「先生の味方をしている」
「私を責めている」
と感じ、同意してくれる人のところへ移っていく。
これは、単に頑固だから起こるわけではありません。
人間には、自分の考えに合う情報を選び、自分を認めてくれる集団へ近づき、不快な反対意見から距離を取ろうとする心理的傾向があります。
SNSは、その傾向を生み出したわけではありません。
しかし、同じ意見の人を短時間で見つけ、同意だけが繰り返される環境をつくりやすくしました。
この現象を理解する上で重要になるのが、
選択的接触。
確証バイアス。
社会的承認。
集団極性化。
エコーチェンバー。
という概念です。
今回の記事では、なぜ人は自分に同意する人だけを探すのかを、研究者、研究方法、結果、限界、そしてSTUDY HOUSEでの実装まで含めて考えます。
人は正しい情報より、安心できる情報を選ぶことがある
自分の考えと一致する情報を積極的に選び、矛盾する情報を避ける傾向は、選択的接触と呼ばれます。
選択的接触は、Leon Festingerが1957年に体系化した認知的不協和理論と深く関係しています。
認知的不協和とは、自分の考え、行動、結果の間に矛盾が生じた時に感じる心理的な不快感です。
例えば、生徒が次のように考えているとします。
「自分は十分に勉強した」
しかし、テストの点数は低かった。
先生からは、
「学習時間だけでなく、再テストが不足していた」
と指摘された。
この時、生徒の中には、
「自分は十分にやった」
という認識と、
「結果につながる学習が不足していた」
という情報が同時に存在します。
この矛盾は不快です。
不快感を減らす方法の一つは、自分の認識を修正することです。
「長時間机には向かったが、自力で思い出す練習は少なかった」
と考え直す。
しかし、この修正には、自分の学習方法が不十分だったと認める痛みがあります。
もう一つの方法は、自分の認識を支持する情報を探すことです。
「勉強時間が長ければ十分だと言っている人」
「テストの問題が悪かったと言ってくれる人」
「先生の指導方法を批判してくれる人」
を探す。
同意する情報が増えると、不協和は弱まります。
つまり、人が自分と同じ意見を探すのは、正しい答えを知りたいからだけではありません。
心理的な不快感を減らし、自分の自己像を守るためでもあります。
選択的接触は、いつでも起こるわけではない
Festingerの理論からは、自分の考えに合う情報を選びやすいという予測が導かれました。
しかし、その後の研究では、選択的接触がいつでも同じように生じるわけではないことが分かっています。
John CottonとRex Hieserは1980年、大学生に自分の考えとは異なる立場の文章を書かせる実験を行いました。
参加者には、その文章を書くことを自分で選んだと感じる条件と、ほとんど選択の余地がなかった条件が設定されました。
その後、自分の行動を支持する情報と、自分の行動に反する情報のどちらへ接触するかを選ばせました。
自分で選んだという感覚が強く、認知的不協和が生じやすい条件では、自分の行動と整合する情報が選ばれやすいことが示されました。
一方、過去の研究では同じ傾向が一貫して確認されておらず、情報の質、本人の確信度、選択の自由、情報への関心などによって結果が変わります。(サイエンスダイレクト)
したがって、
「人は必ず反対意見を避ける」
と単純化することはできません。
自分の考えに自信がない時には、反対意見を知ろうとすることもあります。
重要な判断をするために、あえて異なる情報を集める人もいます。
選択的接触は、人間の固定された性質ではなく、状況によって強さが変わる傾向です。
確証バイアスは、情報を選ぶ時だけに起こるのではない
選択的接触は、
どの情報を見るか
という段階の偏りです。
一方、確証バイアスは、情報の探索だけでなく、受け取り方や記憶にも関係します。
Raymond Nickersonは1998年、確証バイアスに関する幅広い研究をレビューしました。
Nickersonは、確証バイアスを、すでに持っている信念、期待、仮説を支持する方向へ証拠を探したり解釈したりする傾向として整理しています。
このレビューは、一つの実験ではありません。
仮説検証、記憶、対人認知、科学的推論、社会的判断など、複数領域の研究を統合した理論的レビューです。(Sage Journals)
例えば、生徒が、
「先生は自分のことを嫌っている」
と考えたとします。
すると、先生が厳しく注意した場面は、
「嫌われている証拠」
として記憶に残ります。
先生が忙しくて質問への回答を短くした時も、
「自分とは話したくないんだ」
と解釈します。
一方で、
面談に時間を取ってくれた。
学習計画表へ丁寧なコメントを書いてくれた。
進路について調べてくれた。
こうした情報は、
「先生なら当然」
「仕事だからやっただけ」
と軽く扱われることがあります。
同じ出来事を見ても、自分の信念に合う情報は強い証拠となり、合わない情報は例外として処理される。
これが続けば、
「先生は自分を嫌っている」
という考えは、本人の中でますます確かなものになります。
SNSでは「検索する言葉」が結論を決めることがある
SNSや検索サイトで情報を探す時、最初に入力する言葉が重要です。
例えば、
「塾 課題多すぎ おかしい」
と検索すれば、塾の課題量を批判する情報が多く表示されます。
「塾 課題 多い 意味」
と検索すれば、反復学習や課題設計の意義を説明する情報も表示されるでしょう。
「先生 注意 自分だけ」
と検索すれば、不公平な指導を受けた体験談が見つかります。
「先生 注意される理由 聞き方」
と検索すれば、誤解を解消する方法が見つかるかもしれません。
検索は中立に見えますが、質問の立て方に、すでに本人の仮説が入っています。
「先生はおかしいのか」
と問えば、先生がおかしい証拠を探すことになります。
「何が起きたのか」
と問えば、複数の可能性を検討しやすくなります。
確証バイアスを防ぐには、情報をたくさん集めればよいのではありません。
自分の仮説に反する可能性も含めて、問いを設計する必要があります。
なぜ「共感」が必要なのか
人が自分に同意してくれる人を探す背景には、社会的承認への欲求もあります。
自分の感情を分かってほしい。
自分の立場を認めてほしい。
自分だけがおかしいわけではないと確認したい。
人間にとって、他者から受け入れられることは重要です。
Roy BaumeisterとMark Learyは1995年、所属欲求に関する幅広い研究をレビューしました。
彼らは、人には持続的で肯定的な対人関係を形成し維持しようとする基本的な欲求があり、この欲求が感情、認知、行動、健康など幅広い領域に関係すると論じました。
この研究も単独の実験ではなく、対人関係、拒絶、孤独、集団形成などに関する既存研究を統合したレビューです。
その後も、社会的承認や拒絶が心理状態へ影響することは多くの研究で検討されています。
子どもが家へ帰り、
「先生にこんなことを言われた」
と話す時、必ずしも事実認定を求めているとは限りません。
まず、
「つらかったね」
「悔しかったね」
「自分だけ責められたように感じたんだね」
と受け止めてほしいのかもしれません。
この段階で保護者が、
「でも、あなたにも原因があるでしょう」
とすぐに返すと、子どもは、
「分かってもらえなかった」
と感じます。
すると、共感してくれる友達やSNS上の人を探し始めることがあります。
共感と同意は同じではない
ここで非常に重要な区別があります。
共感とは、相手がどのように感じたかを理解しようとすることです。
同意とは、相手の解釈や結論を正しいと認めることです。
子どもが、
「先生に嫌われている」
と言った時、
「嫌われているように感じて、つらかったんだね」
と返すのが共感です。
一方、
「その先生はあなたを嫌っている。先生が全部悪い」
と結論づけるのは同意です。
共感するために、相手の説明を事実として全面肯定する必要はありません。
感情は受け止める。
解釈は検討する。
事実は確認する。
この三つを分ける必要があります。
ところが、SNSでは短い言葉による即時的な反応が求められます。
「分かる」
「それはひどい」
「あなたは悪くない」
という返答は、素早く安心を与えます。
一方、
「前後の状況が分からないので、相手側の説明も確認した方がよい」
という返答は、冷たく感じられることがあります。
そのため、慎重な意見より、断定的に味方をしてくれる意見の方が支持されやすい場面があります。
「いいね」は事実の証明ではない
SNSでは、自分の投稿に多くの「いいね」が付くと、
「多くの人が、自分の説明を正しいと認めた」
ように感じることがあります。
しかし、「いいね」には複数の意味があります。
つらかったことへの共感。
投稿を見たという合図。
関係を維持するための反応。
書き方への賛同。
相手を励ます意図。
自分にも似た経験があるという表明。
必ずしも、
投稿に書かれた出来事が客観的事実として正しい
という判定ではありません。
そもそも、投稿を読んだ人は、出来事の一方の説明しか知りません。
先生や友達の説明を聞いていない。
実際の会話を見ていない。
その前後に何があったか分からない。
それでも、文章だけをもとに判断しています。
100人から同意を得ても、出来事の事実確認が完了したことにはなりません。
社会的承認の数と、説明の正確性は別です。
同じ意見の人が集まると、意見は強くなるのか
同じ方向の意見を持つ人が話し合うと、集団としての意見が、もともとの傾向より極端になることがあります。
これを集団極性化と呼びます。
Serge MoscoviciとMarisa Zavalloniは1969年、フランスの高校生を対象に集団討議の影響を調べました。
参加者は、フランス大統領シャルル・ド・ゴールとアメリカ人に対する態度を、討議の前後で回答しました。
個人で回答した後、集団で話し合い、再び態度を測定しました。
その結果、討議前から好意的だった対象には、討議後により好意的な態度が見られ、討議前から否定的だった対象には、より否定的な方向への変化が確認されました。
この研究は、集団が常に中間的な意見へ収束するのではなく、もともとの方向を強める可能性を示した代表的な研究です。(CiNii)
ただし、この研究は特定の時代、文化、対象を扱った比較的小規模な実験です。
すべての集団討議で意見が極端になるとは限りません。
集団内に異なる意見がある場合。
正確な情報が共有される場合。
結論を慎重に検討するルールがある場合。
専門的な進行役がいる場合。
こうした条件では、意見が修正されたり、より妥当な判断へ近づいたりすることもあります。
問題は、
同じ意見しか存在しない集団で、同意だけが繰り返されること
です。
なぜ集団の意見は極端になるのか
集団極性化が生じる理由として、主に二つの説明が研究されてきました。
一つは、説得的議論です。
同じ方向の意見を持つ人が集まると、自分がまだ知らなかった同方向の理由を聞くことになります。
例えば、
「先生の対応はおかしい」
と考える人が集まる。
一人が、
「質問への答え方が冷たかった」
と言う。
別の人が、
「ほかの生徒には笑顔だった」
と言う。
さらに別の人が、
「課題量も多すぎる」
と言う。
一人ひとりが別の根拠を持ち寄ることで、
「単に言い方が気になった」
という最初の印象が、
「先生は意図的に生徒を傷つけている」
という強い結論へ変わる可能性があります。
もう一つは、社会的比較です。
人は、集団の中で自分がどの位置にいるかを気にします。
周囲が先生を強く批判している時に、自分だけが慎重な意見を言うと、
「先生の味方」
「共感性がない」
と思われるかもしれません。
そこで、集団内で受け入れられる方向へ、自分の発言を少し強める。
全員が少しずつ強い表現を選ぶと、集団全体の意見が極端になります。
エコーチェンバーとは何か
エコーチェンバーとは、似た意見を持つ人々が集まり、同じ情報や解釈を繰り返し共有することで、その考えが増幅される情報環境を指します。
洞窟の中で声が反響するように、自分たちの意見が何度も返ってきます。
すると、
「周囲の人が全員そう言っている」
「これほど多くの投稿があるのだから正しい」
「反対意見を持つ人の方がおかしい」
と感じるようになります。
しかし、そこで見えている「全員」は、社会全体ではありません。
同じ関心や意見を持つ人が集まった、限られた集団です。
SNSでは、
誰をフォローするか。
どの投稿を読むか。
何に「いいね」を押すか。
誰をブロックするか。
どのコミュニティーへ参加するか。
という本人の選択が、情報環境を変えます。
さらに、過去の行動に基づいて投稿を推薦する仕組みも、似た情報との接触を増やす場合があります。
大規模なFacebook研究が示したこと
Eytan Bakshy、Solomon Messing、Lada Adamicは2015年、Facebook上で政治的立場を示していた約1010万人のアメリカ人利用者を対象に、異なる政治的立場のニュースへどの程度接触しているかを分析しました。
研究では、
友人関係によって、どの情報が共有されるか。
ニュースフィード上で、どの情報が表示されるか。
表示された情報のうち、本人が何をクリックするか。
という段階が区別されました。
分析の結果、アルゴリズムによる選別も異なる立場の情報への接触を減らしていましたが、誰とつながるかという友人関係や、表示された記事の中から本人が何を選ぶかも大きく関係していました。
つまり、情報の偏りは、
アルゴリズムだけが生み出している
とも、
本人の選択だけで生じている
とも言い切れません。
人間関係、本人の選択、プラットフォームの仕組みが重なって生じます。
ただし、この研究には重要な限界があります。
政治的立場をプロフィール上で示していた一部の利用者が対象であり、Facebook利用者全体を代表するとは限りません。
研究者がFacebook社内のデータを用いていたため、研究の独立性やデータへの外部検証可能性についても議論がありました。
また、記事へ接触したことと、その内容を理解したり受け入れたりしたことは同じではありません。
複数のSNSを比較した研究
Matteo Cinelliらは、Facebook、Twitter、Reddit、Gabという複数のSNSについて、100万人規模の利用者と10億件を超えるコンテンツを分析しました。
研究では、論争的な話題をめぐる利用者間のつながりと情報拡散を調べ、
似た意見の人同士がつながる傾向。
同じ立場の情報が内部で広がる傾向。
の二つからエコーチェンバーを捉えました。
その結果、観察されたデータでは、FacebookとTwitterに比較的明確なエコーチェンバーが見られた一方、RedditとGabでは同じ形が一様には確認されませんでした。(arXiv)
この研究が示す重要な点は、
SNSであれば、どこでも同じエコーチェンバーが生じるわけではない
ということです。
投稿の表示方法。
フォロー関係。
コミュニティーの構造。
返信や共有の仕組み。
プラットフォームごとの文化。
こうした設計の違いによって、情報環境は変わります。
ただし、観察研究であるため、特定の機能が直接エコーチェンバーを生み出したと因果的に断定することはできません。
利用者層の違いや、扱われた話題の違いも影響します。
「同じ意見が多い」と「正しい」は違う
ある説明が何度も表示されると、それが社会の一般的な見方であるように感じます。
しかし、同じ意見が多く見える理由には、複数の可能性があります。
自分がその意見の人ばかりをフォローしている。
同じ投稿が何度も共有されている。
強い感情を伴う投稿ほど拡散されている。
反対意見を持つ人が発言しにくい。
コミュニティーから異論を持つ人が離れている。
推薦システムが過去の関心に近い投稿を表示している。
同じ意見が多く見えることは、その意見の正しさを直接証明しません。
必要なのは、
何人が言っているか
だけではなく、
どのような証拠に基づいているか。
反対の証拠は検討されたか。
当事者双方の説明を確認したか。
第三者が確認できる記録はあるか。
を考えることです。
生徒の相談が「味方集め」に変わる時
相談すること自体は大切です。
一人で抱え込まず、信頼できる人へ話す。
助けを求める。
別の視点を聞く。
これは問題解決に必要な行動です。
しかし、相談の目的が、
何が起きたのかを整理すること
ではなく、
自分が正しいと認めてくれる人を集めること
へ変わる場合があります。
例えば、
「先生から課題の未提出を注意された」
という出来事があったとします。
最初の友達へ相談する。
友達は、
「でも、提出していないなら仕方ないんじゃない?」
と答える。
すると別の友達へ相談する。
その友達は、
「その先生、前からおかしいよね」
と言う。
今度はその友達にだけ詳しく話す。
さらにSNSで、先生に対する不満を投稿する。
同意するコメントを保存する。
反対意見を述べた人をブロックする。
やがて、
課題を提出しなかった
という最初の問題は消え、
先生が生徒を不当に扱っている
という問題だけが残ります。
本人の感情が嘘だったわけではありません。
注意されて恥ずかしかった。
言い方が厳しくて傷ついた。
それは受け止める必要があります。
しかし、同意を集める過程で、本人が取り組むべき問題まで外へ移されることがあります。
問題の代理化が起こる
子どもがSNSや友達から多くの同意を得ると、保護者も強く影響される場合があります。
「友達も先生がおかしいと言っている」
「SNSでも全員、塾が悪いと言っている」
「こんなに共感されるのだから、子どもの説明は正しい」
と考える。
すると、本来は生徒と指導者の間で確認すべきだった問題が、
保護者と学校。
保護者と塾。
SNS上の集団と指導者。
の対立へ変化します。
本人は、自分の課題を説明する必要がなくなります。
相手の話を聞く必要もなくなります。
自分の改善点を検討する必要もなくなります。
問題が、
課題をなぜ提出しなかったのか
から、
どちらが悪いのか
へ変わってしまうからです。
これを避けるには、共感と事実認定を分けなければなりません。
保護者が最初にすべきこと
子どもが、
「みんなも先生がおかしいと言っている」
と話した時、保護者はすぐに多数決を始めないことです。
まず、子どもの感情を受け止めます。
「それは嫌だったね」
「一人だけ責められたように感じたんだね」
「分かってもらえる人を探したかったんだね」
次に、具体的な事実を確認します。
いつ起きたのか。
どこで起きたのか。
先生は何と言ったのか。
子どもは何と答えたのか。
その前に何があったのか。
課題や約束はどうなっていたのか。
ほかの人は実際の場面を見ていたのか。
SNSで同意した人は、どこまで事情を知っているのか。
そして、
「あなたの気持ちに共感することと、何が事実だったかを確認することは別だよ」
と伝えます。
STUDY HOUSEでの実装① 相談の目的を最初に確認する
生徒が相談へ来た時、STUDY HOUSEでは、まず何を求めているのかを確認します。
「今日は、まず話を聞いてほしい?」
「何が起きたのかを整理したい?」
「相手へ伝える方法を考えたい?」
「先生が正しいか、自分が正しいかを決めてほしい?」
相談には複数の目的があります。
本人がまず感情を話したい時に、すぐ問題解決へ進めると、
「分かってもらえなかった」
と感じます。
反対に、共感だけで終われば、必要な問題解決へ進めません。
そこで、最初に目的を確認します。
まず気持ちを話す。
次に事実を整理する。
最後に行動を決める。
段階を分けます。
STUDY HOUSEでの実装② 感情・解釈・事実を分ける
生徒の説明を、次の三つに分けます。
感情
悔しかった。
悲しかった。
恥ずかしかった。
怖かった。
嫌われたように感じた。
感情は否定しません。
解釈
先生は自分を嫌っている。
わざと自分だけを注意した。
自分を辞めさせたいと思っている。
これは、出来事の意味についての推測です。
正しい可能性もありますが、確認が必要です。
事実
課題の提出期限は金曜日だった。
月曜日の時点で未提出だった。
先生から「今日中に提出してください」と言われた。
自分は「分かりました」と答えた。
この部分は、記録や当事者の説明によって確認できます。
この三つを混ぜないことが、エコーチェンバーから距離を取る第一歩です。
STUDY HOUSEでの実装③ 反対仮説を一つだけ考える
確証バイアスを完全になくすことはできません。
そこで、STUDY HOUSEでは、一つの結論を出す前に、少なくとも一つ別の可能性を考えます。
「先生は自分を嫌っている」
という仮説に対して、
「課題の未提出という行動へ注意した可能性はないか」
と考える。
「自分だけ厳しくされた」
という仮説に対して、
「同じ行動をしたほかの生徒への対応はどうだったか」
を確認する。
「問題が難しすぎた」
という仮説に対して、
「基本問題は解けていたか」
を見る。
反対仮説を考えることは、本人の感情を否定することではありません。
結論を急がないための確認です。
STUDY HOUSEでの実装④ SNSの意見を証拠として数えない
SNSで100件の同意があったとしても、それを出来事の証拠数には含めません。
確認するのは、
現場を見た人の証言。
学習計画表。
提出記録。
テスト結果。
LINEのやり取り。
実際に使われた言葉。
課題の指示内容。
面談記録。
です。
SNS上の反応は、
本人がどれほど傷つき、共感を求めていたか
を理解する情報にはなります。
しかし、先生や生徒のどちらが事実上正しかったかを決める証拠にはなりません。
STUDY HOUSEでの実装⑤ 本人が不利になる情報も確認する
生徒の説明を聞く時、本人に有利な情報だけでなく、不利になる可能性がある情報も確認します。
「その前に、先生から何回声を掛けられていた?」
「提出期限は知っていた?」
「先生に説明する機会はあった?」
「自分が言わなかったことはある?」
これは、生徒を責めるためではありません。
問題全体を把握するためです。
同時に、指導者側にも同じ確認を行います。
「説明は十分だったか」
「言葉が強すぎなかったか」
「ほかの生徒と同じ基準だったか」
「本人が話す機会を設けたか」
どちらか一方だけを検証しません。
STUDY HOUSEでの実装⑥ 共感の後にHOWへ進む
生徒が、
「つらかった」
と話した時、まず受け止めます。
その後、
「では、次にどうしたら同じことが起きにくくなる?」
とHOWへ進みます。
課題量を相談する。
提出できない時は期限前に伝える。
学習計画表へ実績を書く。
相手の意図を確認する。
一人で話しにくければ、第三者に同席してもらう。
指導者側も、伝える場所や表現を改める。
共感で心を落ち着かせ、事実確認で状況を整理し、HOWで次の行動へ進む。
これがSTUDY HOUSEでの基本的な流れです。
STUDY HOUSEでの実装⑦ 「味方」と「検証者」を両立する
生徒にとって、先生や保護者が、
自分の味方ではない
と感じれば、正直に話せなくなります。
一方、何を言っても全面肯定される環境では、自分の説明を検証する力が育ちません。
必要なのは、
あなたの価値や感情は守る。
しかし、説明の正確さは一緒に確認する。
という立場です。
「あなたがつらかったことは大切にする」
「ただし、先生が本当に悪意を持っていたかは確認しよう」
「あなたを責めるためではなく、同じ問題を繰り返さないために整理しよう」
と伝えます。
本人を見捨てず、本人の説明にも無条件では従わない。
これが、教育における本当の伴走だと考えています。
研究から言えること
ここまでの研究から、次のことが示唆されます。
人は、自分の考えと一致する情報へ選択的に接触することがあります。
人は、自分の信念を支持するように情報を探し、解釈し、記憶することがあります。
他者から理解され、受け入れられることは、人間にとって重要な心理的欲求です。
同じ方向の意見を持つ集団で話し合うと、もともとの傾向が強まる場合があります。
SNS上の情報環境は、本人の選択、人間関係、プラットフォームの仕組みの相互作用によって偏る可能性があります。
したがって、
自分に同意する人を探す
という行動を、単なる未熟さや頑固さとして片づけるべきではありません。
不快感を減らしたい。
自分の価値を守りたい。
誰かに分かってほしい。
集団から拒絶されたくない。
こうした心理が関係している可能性があります。
研究からは断定できないこと
一方、研究上の限界もあります。
選択的接触は、すべての状況で一貫して生じるわけではありません。
人は反対意見へ進んで接触することもあります。
確証バイアスは広い概念であり、情報探索、解釈、記憶、仮説検証を同じ仕組みで説明できるとは限りません。
集団討議が常に極端化を生むわけではありません。
異なる意見を安全に述べられる集団では、判断が修正されることもあります。
SNS研究の多くは、政治や健康、陰謀論など、論争的な話題を扱っています。
その結果を、中学生の友人関係や学校・塾でのトラブルへそのまま当てはめることはできません。
さらに、大規模な行動データを用いた研究でも、
投稿を見た理由。
本人がどう理解したか。
どの感情が働いたか。
までは直接分からないことがあります。
エコーチェンバーという言葉も、研究によって定義や測定方法が異なります。
したがって、
SNSを使えば必ず考えが偏る。
同じ意見の人と話せば必ず過激になる。
と断定するべきではありません。
科学概念は、生徒の訴えを否定するための言葉ではなく、情報の偏りに気づき、より慎重に判断するための枠組みです。
最後に
人が自分に同意する人を探すのは、正しさだけを求めているからではありません。
安心したい。
理解されたい。
自分の価値を守りたい。
一人になりたくない。
自分の判断に自信を持ちたい。
こうした感情があります。
だから、子どもが誰かへの不満を話した時に、
「同意してくれる人ばかり探すな」
と責めても、問題は解決しません。
まずは、
「つらかったんだね」
「分かってもらえないと感じたんだね」
「自分の味方がほしかったんだね」
と、気持ちを受け止める必要があります。
しかし、共感した後に、
「あなたがそう感じたこと」と、
「あなたの説明どおりの出来事が起きたこと」
を分けます。
気持ちへの共感と、本人の説明を事実として全面肯定することは違います。
共感する。
事実を確認する。
相手側の説明も聞く。
反対の可能性を一つ考える。
本人の改善点と、相手の改善点を分ける。
次に取る行動を決める。
ここまで行って、初めて相談が問題解決へ変わります。
「あなたは悪くない」と言うだけなら、短時間で安心を与えられます。
しかし、本人が同じ問題へ再び直面した時、自分で状況を整理する力は育ちません。
本当の支援とは、本人の感情を守りながら、本人が見たくない事実も一緒に見られるようにすることです。
共感は必要です。
しかし、共感を事実認定へ変えてはいけません。
味方であることと、何でも正しいと言うことは違います。
この区別を大人が示すことで、子どもは、
同意を集める力ではなく、
異なる情報を受け取り、自分の考えを修正し、問題を解決する力
を身につけていきます。
主要参考文献
Festinger, L.(1957). A Theory of Cognitive Dissonance. Stanford University Press.
Cotton, J. L., & Hieser, R. A.(1980). Selective exposure to information and cognitive dissonance. Journal of Research in Personality, 14(4), 518–527.
Nickerson, R. S.(1998). Confirmation bias: A ubiquitous phenomenon in many guises. Review of General Psychology, 2(2), 175–220.
Baumeister, R. F., & Leary, M. R.(1995). The need to belong: Desire for interpersonal attachments as a fundamental human motivation. Psychological Bulletin, 117(3), 497–529.
Moscovici, S., & Zavalloni, M.(1969). The group as a polarizer of attitudes. Journal of Personality and Social Psychology, 12(2), 125–135.
Sunstein, C. R.(2002). The law of group polarization. Journal of Political Philosophy, 10(2), 175–195.
Bakshy, E., Messing, S., & Adamic, L. A.(2015). Exposure to ideologically diverse news and opinion on Facebook. Science, 348(6239), 1130–1132.
Del Vicario, M., Bessi, A., Zollo, F., Petroni, F., Scala, A., Caldarelli, G., Stanley, H. E., & Quattrociocchi, W.(2016). The spreading of misinformation online. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(3), 554–559.
Cinelli, M., De Francisci Morales, G., Galeazzi, A., Quattrociocchi, W., & Starnini, M.(2021). The echo chamber effect on social media. Proceedings of the National Academy of Sciences, 118(9).
STUDY HOUSEでは、共感を「同意」で終わらせず、問題解決へつなげます
STUDY HOUSEでは、生徒が抱いた感情を否定しません。
悔しかった。
悲しかった。
恥ずかしかった。
自分だけ責められたように感じた。
先生に分かってもらえなかった。
まずは、その気持ちを受け止めます。
しかし、
「つらかったね」
の後に、
「だから、あなたの説明がすべて正しい」
とは進みません。
感情。
本人の解釈。
確認できる事実。
この三つを分けます。
学習計画表、提出記録、テスト結果、家族LINE、面談記録、MISTAKE分析などを使い、何が実際に起きたのかを確認します。
本人に改善できる部分があれば、次の行動へ変えます。
指導者側の伝え方や対応に問題があれば、STUDY HOUSE側も修正します。
どちらかを一方的に悪者にするのではなく、
何が起きたのか。
なぜ認識がずれたのか。
次にどうすればよいのか。
を一緒に考えます。
SNSで多くの同意を得ることより、自分の行動を一つ変えることの方が、次の成績と未来につながります。
教科書作り。
ブラックノート。
暗記ツール。
学習計画表。
確認テスト。
MISTAKE分析。
REPLAY。
STUDY HOUSEでは、感情的な評価やその場の同意ではなく、記録と再現によって学習を整えます。
「子どもの気持ちを尊重したいが、どこまで説明を信じればよいか分からない」
「相談するたびに、自分へ同意してくれる人だけを探している」
「SNSの意見を根拠に、学校や塾への不信感を強めている」
「注意を受けた理由より、誰が悪いかという話になってしまう」
そんな悩みがある方は、ぜひ一度STUDY HOUSEへご相談ください。
中学生から大学進学を目指すなら、STUDY HOUSE。
目の前の点数だけでなく、異なる意見を受け取り、事実を確認し、自分の行動を修正できる力まで育てることを大切にしています。
無料体験・学習相談も受け付けています。
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